黒爺のハーフボイルドな71年

黒爺の食い散らかしの恥 書き捨て

力道山


館前にジャージの上下を着たゴッツイお兄さんがキャバイ姉さんを連れて煙草フカしている。ロビーにも体格のいい人たちがたむろしている中、高齢の方もうろうろしている。いつものシネマクレールとは客層が全く違う。
今までの力道山伝とは視点が異なり内面にくい込んでいるので新鮮な映画に仕上がっている。朝鮮人なので大関にしなかった日本人の差別的倒錯と、朝鮮人が日本で成功したい自己嫌悪的葛藤が、たにまち菅野(藤竜也)を軸に展開してゆく。菅野の想いがそのまま日本人の力道山にたいする期待の表れであるので、力道山の裏切り(というよりロボット的役割からの脱却)に菅野は寛容である。この寛容さは当時最もグローバルスタンダードな力道山が理解しがたかった極めて日本的な様式であろう。実際には菅野との決別は映画で現されているよりも前であるが、力道山との関係をギリギリまでひっぱる構成によって苦悩が鮮明になっているのは成功している。力道山は志を残しながら39才で刺され亡くなる。ユセフトルコが出てこないのが残念。