文七元結を聞く会
久しぶりにナンバを歩いた。あいかわらずナンバウォークで迷う。学生時代よく行った小さな天丼店を見つけて感激。なんのことはないトリイホールはその向かいだった。今回は大学の落語研究会のOBによる上演である。したがって素人の会である。
文七元結 by 直太朗さん
長兵衛は腕のいい職人だが博打にはまり負けて帰っては、女房に手を出すとんでもないDV野郎だ。長兵衛が博打から足を洗うために、娘を吉原に預けて50両(現在の二千万円くらい)を手に入れた帰り道、吾妻橋から身投げをしようとする若者に出くわす。商売の金50両を掏られお店に申し訳が立たないので死んでお詫びをするという。長兵衛はその身知らずの男に50両を渡して自殺を思いとどまらせる。無一文で帰った長兵衛のウチでは大喧嘩が始まり、大店(おおだな)では掏られたと思った金が先に戻っていて、この50両はどうしたんだと大騒ぎになる。最後は長兵衛の心意気に大店の旦那他が感心してハッピーエンドになる。
べらんめいの男が身知らずの男の命を救い、それが元でおめでたい結末を迎えるというできすぎた話だが人情話噺としてこれくらいのギャップがないとおもしろくない。
僕が聞いたことがあるのは圓生さんと志ん朝さんのだが、どちらも死ぬの生きるのを江戸っ子の気っぷの良さで語っている点に腑に落ちない気がしていた。
今回は現代風に「死んじゃいけねぇんだ」のセリフが繰り返され強調されることで長兵衛の性格以上のものが表現できたのではないかと思う。力演でございました。