池波正太郎の世界
朗読塾公演には塾生の方から何度もお誘いをいただいていたのだが、今回やっと実現。開演間際に行ったらほぼ満席だった。かろうじて前列の端に空いた席をみつけた。
演目は「おせん」「おっ母、すまねぇ」「狐の嫁入り」「道場破り」の四演目。朗読劇は初めて観る。単に読むだけではなく人物配置や若干の動作、ライティングによってすごく立体的に演出されている。上手と下手に置かれた障子と畳それに蛇の目、長椅子などわずかな道具類が観客の想像力を広げる助けをしている。すなわち台所になり商家の店先になり道場にも御稲荷さんにも自在に変化する。池波正太郎の小説は読み進まないと主人公がわからない場合もある(僕だけかもしれんが)。「おせん」は悪人が主人公かと思ったら相手の女郎の物語であったし「おっ母、すまねぇ」とともに罪を犯す業やその周囲の人情の機微が朗読によって浮かび上がってくる。「狐の嫁入り」は笑わせてくれるし「道場破り」は刀が無用になった世にプライドだけで生きていかざるを得ない武士の悲哀がヒューマンに描かれる。どれも秀作である。
岡山が誇るクリエーティブ集団に間違いない。