黒爺のハーフボイルドな71年

黒爺の食い散らかしの恥 書き捨て

古今亭志ん朝


「抜け雀」まじめだがメンツ高い夫と計算高く現実的な女房。旅籠の夫婦が面白い。大酒飲みの文無しを泊めてしまい一悶着。女房に集金を言い付けられ長逗留の客に「へい、そろそろお支払いを」「大きいのと細かいのとどっちがよい」「でわ、大きい方で」「あいにく、大きいのはない」「じゃ、細かくても結構でございます」「細かいのもない」貧乏を楽しんでる。
よく時代劇では女性は学問などもってのほか地位は低く知識もないという風に描かれるが、実際はそうではなく読み書きそろばん、裁縫、礼儀作法、踊りや三味線などの習い事等は一般常識として持っていて、その辺は男よりしっかりしていたらしい。学問とは儒学とか蘭学国学であってこれは男でもいらんもんじゃな。着物の繕いや直し、いまでいうクリーニングが出来るので日銭が稼げるののも女性であった。そのため夫の不始末や急な出費で「お前さん、勘定は私が何とかするから、仕事に精を出しておくれ」(芝浜)のセリフで夫の稼ぎにだけ頼っていたのではないとわかる。女性は充分自立していたのだ。そういえば婿養子の制度も男子が産まれなかったからではなく(いても無能なら)外から優秀な人材を取り入れ家業の繁栄を第一に考えたシステムのようだ。なので離縁の時に出て行くのは男であった。昔から男はつらいよなんだなぁ。