黒爺のハーフボイルドな71年

黒爺の食い散らかしの恥 書き捨て

ライブハウス「ロフト」青春記 平野 悠著 講談社刊


まだライブハウスという言葉すらなかった40年前小さなジャズ喫茶から「ライブハウス」の源流を作った男の回顧録と資料集ともいえる貴重な発言が一杯つまった本である。
夢も希望もなくたいした挫折も経験していない青年がジャズ喫茶くらいなら出来るだろうと軽い気持ちで開店したのがジャズ喫茶ロフトだ。案の定半年ほどで破綻するのだが、そこから開き直りでチラシを配ったりいろいろな企画を練り地元の学生にアピールして地元密着型に変身。レコードの在庫が少なさはお客に貸して貰って補うとか、店主がジャズ講座をしている間は客がカウンターを守ったり、客の方がジャズに詳しかったり、徐々に店は活発化していく。そのころからの常連客が坂本龍一のほか後に音楽業界やメディアなどで活躍する人たちだった。この人脈がライブハウスを作り運営していく原動力となる。
サザンのメンバーはロフトで働いていて店員バンドだった。TVプロデューサーの目にとまりデビュウがザ・ベストテンでしかもロフトから生中継されるという快挙を成し遂げた。平野はこのバンドを何度も聴いていたにもかかわらず才能を見抜けず後悔したことや、ARBが武道館公演の翌日新宿ロフトに出演して、昔の約束を守ったことがつづられる。スケジュール表を見ると山岸潤史と山下達郎がセッションしていたり、今をときめくミュージシャンが連日出演していた様子がわかる。