裏通りにある小さなステーキハウス。20年程前、見かけてそのままになっていたのだが先日通りかかってまだ存在しているのに驚いた。
どんな店なんだろうと好奇心がわいてきた。コック帽を被った小粋なシェフがシャープナーでナイフを研いでいるような光景を思い浮かべつつドアを開ける。
「マツバラさんがなぁ、えぇげんにやってくれるから、任しといたらえぇわ・・・あ、いらっしゃい、お客さんじゃから切るわ」「雨の中をいらっしゃって・・・どうもありがとうございます」「まぁ、そこらにかけて」
ももけたカーデガンを羽織ったおばさんが携帯片手に立ち上がる。
この夜は雨だったので傘をたたみ、コートを脱いで入ったので引き返せない状況。
厨房はスゴイ状態。使い掛けの調味料で埋まっている。
ここはひとつ冒険でもしている気持ち。ビールで落ち着こう。
「国産ロース150gでサラダ温野菜ご飯味噌汁で4000円。千屋牛が最高じゃなぁ、うちのは違うけど」
「ドレッシングはなにがええ?」「マヨネーズね、置いとくから好きなだけ使って」ドン!
腹を据えていただきましょう。おおざっぱに切られたレタスに難儀しながらかじりつく。
冷蔵庫から大きい肉塊を出して切り始める。真ん中に包丁を入れたからチョトびびった。1センチほどを切り出して、残りの二塊を別々のジプロックに入れて仕舞った。わざわざブロックの中央部を使ってくれたのかな?
「これくらいじゃったらえかろう。計ってねえけど150gはあろうなぁ。」
これもおおざっぱに切られた野菜を炒めはじめ「ニンニクは?」「ワサビもええんょ、しっとる?」「ポン酢も、塩胡椒もつこーてな」
「肉は何遍もひっくり返したらいけんのよ」三回目ですけど。
「ちそうに切って食べやすうしたげるけん」「(もう一人のおばさんに)ステーキナイフどけぇやったん・・・ここにあったわ、探がしょうたんじゃ」「研ぎに出しとんかとおもうたわ」「出してねんじゃな、」
しかし、鉄板の威力はすばらしい。フライパンとは違うわ。焼き加減もへったくれもないが肉は美味い。僕はウェルダンが好きなのでゆっくり味わいながらいただきました。味噌汁がAMフーズだったのはこの際目をつぶろう。きっとそのほうがよかったとおもう。日頃飲んでるのと同じだったから。