黒爺のハーフボイルドな71年

黒爺の食い散らかしの恥 書き捨て

つるやわしこもち

西車博士の分析による「ゆでめん」の次元的考察。
つる・・・麺の表層を、唇・舌・上顎・喉、で感じる触感。
やわ・・・麺全体の弾力を、口中・喉、の圧迫で感じる硬度。
しこ・・・麺中心部断裂の瞬間に、歯先で感じる硬度。
もち・・・麺の断裂直前の弾力を、歯先・上顎で感じる粘度。
西車博士の分析が優れているのは、麺が口腔内を唇から喉までの通過する経過路と時間、麺断裂時におけるの時間的変化と食感断層的変化が端的に表されているからである。つるやわしこもちの経時変化は、皮膚感覚として唇に始まり舌尖、舌背、口蓋、咽頭に至る水平的経路と歯牙先端部から歯根膜(歯牙の根を取り巻く感覚器)にかかる咬合圧としての垂直的歯牙感覚経路があるといえる。時間的に「つる」が最も長い感覚であり「しこ」および「もち」はそれぞれほぼ一瞬に近い。しかし、この一瞬に持続感を与えているのが「やわ」であろう。さらに麺はかみ砕かれたのとそうでないのとが一体になって食塊を形成する。これが喉越しを決定するといえる。よく「麺は噛まず飲む」と言われるが、これは咽頭部における快感中枢の刺激の仕方によるものだろう。かみ砕かれた食塊の通過する感触と長いまま撫でるように通過するそのどちらが快感かは個人の嗜好による。つるやわが感覚であるのに比して、しこもちは麺の特性をも表している。粉の配合や加水率、卵の有無や寝かせ方ゆで加減などによって変化する歯ごたえで、しこはアルデンテといえる。やわは食塊が飲み込まれる直前に特に舌背と口蓋の間でその感覚は頂点に達する。