黒爺のハーフボイルドな71年

黒爺の食い散らかしの恥 書き捨て

芝居「八月、鳩は還るか」loop⑩・鳥滸会制作

10月29日17時の回鑑賞

 台風と重なって、屋内とはいえ準備や集客など大変だったろう。しかし公演二日目の午後は、まぶしいくらいに晴れてすがすがしい。
 物語は、身寄りのない人たちが集まって共同体を作り自給自足の生活をしている山奥の村を、週刊誌の記者が取材に訪れる所から始まる
 村人達は祭りで創作劇を発表するので、その稽古を見て欲しいという。その芝居はケンという若者の奇妙な半生を描いたものだ。実在すると信じているが見た者はいないらしい。
 共同体の理想や矛盾が劇に反映され、村人も記者も追い詰められたり納得し合ったり、全体的に暗いまま芝居は進む。
 しばらくして週刊誌が発行され村人達は喜ぶ。どうやら記者は好意的な記事を書いたらしい。そして唐突に村人達はまぶしい光の中に包まれ芝居は終わる。
 農業を主体としたコミュニティは、ヤマギシ会とよく似てる。最近どうなってるのかは知らないけど、昔友人が「特別講義」を受けて熱く語っていたな。
 最後の光は大島渚監督の「絞死刑」の最後に似ている、と思った。40年以上前の映画で記憶に薄いのだが、光に包まれた死刑囚に「これが国家だ。権力だ」というような佐藤慶のナレーションで終わる。この芝居の意図とは無関係だろうが、僕の勝手な連想だ。
 帰り道、前を行く若者達のひとりが「俺にはわからんかった」と話していたが、それでいいと思う。いろいろな解釈が出来る(というか、そのように作ってある)ので、いくつかでも印象に残る台詞や場面があればいいのだ。
 loop⑩(ループ・テン)の芝居はいつもシンプルな道具立てで感心する。今回は平台と箱足、椅子の組み合わせを変えるだけで、宿舎の4階や居間、集会所、列車などを表していて単純だが立体的な舞台になっていた。