黒爺のハーフボイルドな71年

黒爺の食い散らかしの恥 書き捨て

立喰師列伝@シネマクレール


一言で言えばけったいな映画である。映画というよりパタパタ漫画の実写版がより近い。押井守監督によればスパーライブネーションというらしい。「サンダーバード」のスーパーマリオネーションを意識したものか。「実写」と書いたが正確には「静止画」である。デジタル写真を3DCGアニメーションにして動かす手法である。なので実写ともアニメともつかない不思議な画面になっている。役者は演技と言うよりもデジカメの前で表情と姿勢を一コマずつ撮影しているだけである。文章では何のことかさっぱりわからないと思うので、その一点をみるだけでも価値があるといえる。
架空の昭和戦後史を外食産業の側面から、戦後闇市から60年安保、東京オリンピック大阪万博、70年安保、学生運動、ハイジャック、連赤そして飽食の時代を立喰師(無銭飲食の業師)の変遷に置えた偽ドキュメンタリーである。「偽」ではあっても歴史認識は的確で明解である。全編をつらぬくアジ演説様のナレーションで緊張感が途絶えることがなく、これは大島渚映画のナレーション佐藤慶を彷彿とさせる。主題歌は昭和残侠伝風で昭和の香り。