黒爺のハーフボイルドな71年

黒爺の食い散らかしの恥 書き捨て

若松孝二 実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(みち)


重いという言葉で表しようもないが、他に言いようがないので使わせてもらう。ただ重苦しいとは違う。あさま山荘事件の時僕は上京して1年目の冬であった。今と違ってテレビを持っている学生はおらず主に近所の飯屋や銭湯(この頃は午後早い時間からやっていて20円くらいだった)で見ていた。学生運動に共感する反面デモや集会には恐くて参加できなかった。内ゲバの時代でもあったのでセクトに加入すること自体が命捧げます的覚悟が必要だったと思う。頻発した過激派による交番襲撃や内ゲバはおっかなく、あさま山荘後明らかになった同志殺しはいたたまれない思いだった。
2002年公開の「突入せよ!あさま山荘事件」は警察側からの視点で描かれており極寒の中人質を救出し犯人を逮捕するのは映画エンターテイメントとして面白かった。政治的思想的な事はさておき犯人像を見せないことで不気味でもっと大きな悪にみせるという手法だね。しかしこれは「あさま山荘」でなくてもよかったしランボーや007とおなじ地平にあるといえる。もしかしたら友達か知った人が連合赤軍に入っていても不思議ではない世代にいる僕には、たんに一つの事件としてかたづけられない思いがあり「突入せよ!」は、ざけんじゃねぇ!と叫びたくなる衝動にも駆られた。
「実録・連合赤軍」はまさに実録である。実際に赤軍の成立過程を垣間見た若松孝二だからできた映画である。そして犯人の幾人かは10数人の犠牲を詳細に明らかにして自らを分析し総括をおこなっている。他の粗暴な事件とはちがう展開である。この点で重い事件に重い映画であるが、若松孝二が実録としたことが心の中にちょこっと火を灯すのである。