黒爺のハーフボイルドな71年

黒爺の食い散らかしの恥 書き捨て

金木犀時代のそよぎ方

会場は画廊で2階にある。中央に階段があり、客席は床に貼った黒いテープで囲まれた部分に直に座る。
舞踏家香月さんとのコラボ。コラボというよりカクトウギに近い。音に合わせて踊るのでなく、踊りに合わせることでもない。主役のひとりあがたさんは中央ではなく左端の隅にまるで伴奏者のように位置している。限られた空間で踊れるスペースを充分に取るためだろうと思ったが、そうではない。香月さんが登場してくる階段に対峙するに必要な距離だったのだろう。

4曲目が終わり階段に白い傘が見え始め徐々に赤い着物の香月さんが登ってくる。登り終えても前方の客は気が付かないくらいにゆっくりと静かに。

舞踏の最中あがたさんは伴奏ともチューニングとも言えないくらいの小さな音量で椅子に座って弾いているようだ、私の場からはよく見えない。二人の間の緊張感より客の方が張りつめた空気で、ステージと客席の境界として床に貼ってある黒いテープが結界のように浮かび上がる。舞踏家が近づくと黒いテープからはみ出た足を、まるで恐れ多いことをしていたかのように引きもどす。音楽と肉体がそれぞれ反応し合う現場に立ち会う客もまた揺らぐ空間を共有し不思議な浮遊感と一体感を形成していた。
この日はパーカッションも入れてより深みのある音を造っていた。