黒爺のハーフボイルドな71年

黒爺の食い散らかしの恥 書き捨て

プラダを着た悪魔(再考)

冒頭「Suddenly I See@KTタンストール」がフルバージョンで流れるご機嫌なはじまり。この曲と同じ快適なテンポで映画は進んでいく。中だるみなし。一見するとサクセスストーリーのようだがそうではない。いやそうかもしれない。前半はマイフェアレディで後半はペーパーチョイスの世界ともいえる。結果的にサクセスするのだけど、これってありな結末。夢実現のためのワンステップとして応募した会社が本人は知らなかった超ビッグな世界。場違いすぎて逆に新鮮さを買われ意外にも採用。そこで悪魔みたいな上司に仕え失敗と挫折を繰り返しながら洗練し成長していく主人公。その悪魔の人間性にふれ、やっとパートナーとして認められたところであっさり転身する。物語はここまでである。
せっっかく掴みかけたすごいポジションを蹴ってしまうのだ。もちろんそれは小さな頂点にしか過ぎずさらなる努力と苦労が待っているのは自明のことなんだが、投げ出さなくてっもいいじゃないか。しがないコックの恋人と気のいい友人達、自分の身にあった世界を選択したということか。
ようするにこの映画はプロセスを楽しむタイプなんだな。嵐のような9ヶ月間を決して忘れることはないだろう。もしパート2が作られるとしたら側近の出世しこねた秘書エミリーと同じく独立できなかったアートディレクターのナイジェルにスポットを当てて欲しい。彼らこそ真正面から悪魔(この場合は上司ではなくその世界)と対峙している最前線の人達なんだから。
ふたつのレビューを書くのは久しぶりそれだけ面白かった。全編に流れる音楽はヴォーグ@マドンナをはじめU2など最高。