黒爺のハーフボイルドな71年

黒爺の食い散らかしの恥 書き捨て

ラーメンの語られざる歴史@国書刊行会刊 2376円

       ジョージ・ソルト著 野下祥子訳

 「日本占領関係資料マイクロフィルム」など機密扱いだった占領軍の資料と多くのラーメン本から大衆文化としてのラーメンを歴史的に語る。なかには岡山ラーメン学会でお世話になった小菅佳子教授の「にっぽんラーメン物語」からの引用もありうれしい。
 冒頭一行目のトップに「日本でいちばんラーメンを食った男大崎裕史」さんを出し、著者はこう続ける。彼は労働者学生の食べ物だったラーメンを日本の食文化の象徴的な存在へと引き上げた世代のひとりであり、ラーメンを単なる食べ物以上の存在に変えたと。
 前半は中国発祥の拉麺が労働者食の定番になった1960年代までのラーメンの歴史を述べ、後半はラーメンが国民食になったのは1980年代〜1990年代であり、2000年代でラーメンは国際化し始めてるという二部構成になっている。
 戦後の占領政策による小麦などの食糧支援についても詳しく触れてあり、大筋では清水健郎「ラーメンと愛国」に沿っている。
 このアメリカ小麦は無料ではなく高値で買わされていたという事実も明らかになる。そして米食からパン食への転換。しかしパンに味噌汁は合わないので麺を作ったらどうかと政府に提案したのが安藤百福である。この辺の駆け引きや活躍(というか暗躍)についてもスリリングな展開で一気に読ませる。
 ラーメンの国際化についても思慮深く、ソルト氏は日本人じゃないのかと思わせるほど多くのラーメン本が出てくる。
 若干訳が硬いので、文章的な面白さには欠けるがラーメンを知る上では重要な書籍になるだろう。